『Bass Lab社のJinmoid、Kalium Strings社のオリジナル弦、超高分子量ポリエチレンで作られたオリジナルピックの神爪、Z.Vex社のFuzz Factory 7、Albit社のGC-1、そしてZT Amp社のLunchbox。レコーディングや演奏会と違い、日常で使用しているのは、これら最小限の機材。いずれも”Zazz”(”たいへん素晴らしい”という意味の隠語)なものであり、それらが組み合わされて実現される弾き心地と出音は、Zazzを超えて”Xazz”なるもの。そしてこれは、日常の音。』(JINMO)
“Xazz”なるアルバム・タイトルの由来は前述のJINMOの言葉通りですが、この4つのアルファベットが感じさせる聴覚的なイメージと、視覚的なイメージは、ここに収録されている音を表すのに非常に的確だと、私は思います。
本作に使用された機材中、エフェクターはファズとコンプレッサーのわずかに2つ。
特にファズのFuzz Factory 7は、最近のJINMOの表現に重要な影響を与えていると思われます。
1998年6月に、ニューヨークの楽器店でJINMOは、当時まだ日本では殆ど知られていなかった新進気鋭のエフェクター・メーカーのZ.Vex社によるFuzz Factoryを入手しています。
以来、長年にわたり愛用し続けていましたが、今年2015年初頭の全米ツアー時に、同社の代表で製作者のZachary Vex氏と出会い、意気投合し、本人からFuzz Factoryのアップグレード機種であるFuzz Factory 7を入手しました。
以来、日常的にギターを演奏する際は、常にこのFuzz Factory 7を愛用しています。
本作はこれを用いて録音されたJINMOのアルバムとしては、初めてのものとなります。
https://en.wikipedia.org/wiki/Z.Vex_Effects
加えて、ZT Amp社のLunchboxというアンプの存在も重要でしょう。
本作のアルバム・ジャケットに写っているように、小型のギター・アンプですが、1台でなんと200ワットの出力をもち、自動車のクラクション音はおろか、ジェットエンジンのタービン音に近いほどの音圧を実現します。
これは米国のオーディオ・マニアには非常に有名なスピーカー・エンジニアである、同社代表のKen Kantor氏が制作したものです。
JINMOはKantor氏とも親交厚く、日常的に新たなギター・アンプについての革新的アイデアの交換をメールでおこなっていたりします。
近年のJINMOの演奏会では必ず使用される機材ですが、日常においてもやはりこれが愛用され続けています。
https://en.wikipedia.org/wiki/Kenneth_Kantor
本作に収められた9曲の演奏は、すべてJINMOのアトリエでおこなわれている講義の最中、予告なしに、受講生達の眼前で、突発的におこなわれたものです。
その録音日は、2015年4月26日、6月21日、8月9日の三日間です。
Impromptuシリーズ同様、”プレクティクス・グロッソラリア”系の即興です。
各曲とも実に多種多様な演奏技術が導入され、至近距離で目撃している受講生達にさえ、それらは解析不可能な複雑さだったそうです。
我々はその結果としてのこの録音に触れるのみですが、私としては音には緊張感はありながらも、とても自由奔放に、ノビノビと楽しそうに演奏しているように、感じられました。
観客ではなく、受講生達と向かいあっての、いつものJINMOの日常の音です。
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ギター愛好家の方々にはもちろん、現代音楽、先端的テクノ、実験音楽をお好きな方々にもお薦めのアルバムです。
前作“Impromptu 140530”から僅かに30日。
通算第195作めのソロ・アルバム(Avant-attaqueからの第176作め)、リリースです。
もちろんCDと同等の、Apple ロスレス 44.1kHz 16bitの高音質です。
(Avant-attaque:HARI)