『25年前、最重度重複障害を持つ強度行動障害者を対象にした演奏会を始めた頃、彼ら同様、私自身も大音量でのハーモニクスとパンニングのもたらす快感に酔いしれた。以後、ハーモニクスとパンニングの研究と実験は続けているが、実はそれらを上手く制御する瞬間よりも、それらが思ってもみなかったまるで化学変化のような、予想外の美しい響きを実現する瞬間に立ち会うことがあり、そんな時はいつもゾクゾクするようなより激しい快感に包まれる。約12,000の外有毛細胞と、約3,500の内有毛細胞が、一斉に風に踊る草木の如く歓喜するような。』 |