『2015年1月〜2月の全米ツアーの際、私はコロラド州デンバーの友人に「JINMOさんを連れて行きたいところがある」と、レッド・ロックスというところへ案内された。
”赤い岩々”という名の通り、真っ赤な砂岩の堆積層が異世界の風景のように巨大に広がる場所だった。
3億3千万年間の歴史が、まさしく高層建築物級の規模で立ち並ぶ様に圧巻された。
古来、聖地であろう。
ここは”神々の庭”とも、”天使たちの庭”とも呼称されている。
海抜数千メートルという高所である上に、その日は大型台風並みの強風で、私は吹き飛ばされそうになりながらも、全身に風のバプテスマを実感していた。
その昔、”風”と”霊”は語源を同じくしている。
従って、ラテン語の諺、”Spiritus, ubi vult, spirat, et vocem eius audis, sed non scis unde veniat et quo vadat”は、”風はその望むところへ行き、あなたはその音を聞く。”と翻訳されると同時に、また”霊はその望むところへ行き、あなたはその音を聞く。”とも訳せる。
そして友人はその強風の中、彼が持参してきたギターを私に手渡し、演奏してくれと言った。
”神々の庭”、”天使たちの庭”に激しく乱舞する精霊と、私は歓喜の中に戯れていた。』
(JINMO)
アルバム・タイトルの”Deva”とは、インドの古代語サンスクリットで”神”、”輝けるもの”を表し、自然界のあらゆるものに宿る強大な自然霊を意味します。
この言葉はヒンドゥー教、仏教などインド系の諸宗教に現れる他、ラテン語の”Deus”などと同じ語源でもあります。
日本語では”天部”、”天衆”、”天”などと訳されたりもします。
非常に重厚なオーケストレーションのアルバムですが、これは総てギター(BassLab社製 Jinmoid)によるものです。
聖地に吹き荒れる霊風に洗われながら、ギターで呼応し、交感するJINMOの、その時の情景が目に見えるような音が、本作に満ちていると思います。
聴きながら、いつの間にか、自分も瞑想してしまうような、そんなアルバムです。
たいへんデリケートで複雑なパンニングと、スペクトル分布を特徴とするアルバムです。
また可聴域すべてを満たし、それ以上の超音波帯域も含んだオーケストレーションが成されていますので、良質のヘッドホンでの御鑑賞をお薦めします。
よく御質問を受けるのですが、JINMOが制作において使用しているモニター・ヘッドホンは、SONYの“MDR-CD900ST”です。
ジャケットはDan Sawyer氏が撮影した美しい写真です。
コロラド州デンバーの赤い岩の上に浮くように座し、額には経頭蓋直流刺激(tDCS)デバイスを装着し、蓮華座(結跏趺坐)を組んでいる様子です。
冒頭のJINMOの言葉に出てくるレッド・ロックスに案内してくれた友人というのが、彼のことです。
ギター愛好家の方々にはもちろん、現代音楽、先端的テクノ、実験音楽をお好きな方々にもお薦めのアルバムです。
前作“Orga Redux”から僅かに25日。
通算第186作めのソロ・アルバム(Avant-attaqueからの第167作め)、リリースです。
もちろんCDと同等の、Apple ロスレス 44.1kHz 16bitの高音質です。
(Avant-attaque:HARI)