『100年前、イタリア未来派のルイージ・ルッソロは、愛玩される音のみへの偏向状態から欺瞞を炙り出し、アンチテーゼの具現を実践した。音楽:非音楽、楽音:非楽音といった区分におけるフィルターの機能をリセットし、旧来の価値を逸脱し、未来へ一歩進みだそうという意志であったが、同時に風音、波音、雷鳴、地響きなどに畏怖と敬愛を持ちながら神の声を聞き出そうとした原始の聴覚美への回帰でもあったように、私には思える。スペクトル分布、エンベロープ、パンニングという音楽、音響の要素に、未来の美意識を持ちながら、原始の自由を与えたルッソロの響きに栄えあれと思うのだ。』(JINMO)
タイトル中の“Russolonica”とは、20世紀初頭のイタリア未来派の音楽家にして画家、ルイージ・ルッソロに由来します。
彼は1913年に論文“L’arte dei rumori (騒音芸術)”を発表し、特製の騒音楽器“Intonarumori (イントナルモーリ)”によって演奏活動もおこないました。
(この楽器は第二次世界大戦により失われ、残念ながら現存はしていません。)
本作はこのルッソロの響き、美意識に対するJINMOの21世紀的共鳴と言えます。
Fuzzと呼ばれる楽器用音響機器の非常に特異な使用法で、多重録音されたJinmoidのオーケストレーションは、風音、波音、雷鳴、地響きのように鳴り響きます。
本作は50の小曲から成りますが、それぞれが異なる50種のFuzzの響きが味わえるのも楽しみのひとつです。
またそれぞれはカットアウトされているのですが、ひとつを延々とループさせると、これがまた面白いのです。
ひょっとすると、これも作者の意図かしら?と思ったりもします。
ミニマル系音楽ととらえて、ループさせた1曲をひとつのアルバムとするなら、50種類のアルバムが楽しめる感じですね。
ジャケットは1916年に撮影されたルイージ・ルッソロの肖像写真です。
デザインはJINMO自身によっておこなわれています。
本作のイメージにぴったりだと思います。
Fuzzが大好きなギター愛好家はもちろんのこと、現代音楽、先端的テクノ、実験音楽をお好きな方々にもとてもお薦めのアルバムです。
前作”Shredding Fetish”から僅かに16日。
通算第168作めのソロ・アルバム(Avant-attaqueからの第149作め)、リリースです。
もちろんCDと同等の、Apple ロスレス 44.1kHz 16bitの高音質です。
(Avant-attaque:HARI)