Quasar APM 08279+5255 (ver.2.0)

1. Quasar APM 08279+5255 (01:00:00)



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『殆ど“無限”と言っても良いほどの膨大なものの実在が、想像力に働きかける力は凄まじく、私は初めて“Quasar APM 08279+5255”の水を知った時、全く打ちのめされた思いだった。想像力を超えるものを想像しようとしてこそ、想像力の限界が拡張されることも実感した。“無限”においては、3次元での6つの両端である上端、下端、右端、左端、前端、後端に加え、時間の両端と言うべき“創始”と“終焉”の概念も喪失される。聴覚表現のあらゆる有限性から解放されたもの…、そう、“Quasar APM 08279+5255”の無限の水音を、私は聴いてみたかった。』(JINMO)

Wikipediaによれば“クエーサー”とは、『非常に離れた距離において極めて明るく輝いているために、光学望遠鏡では内部構造が見えず、恒星のような点光源に見える天体(準恒星状電波源)のこと。』だそうです。

2011年のクエーサー “APM 08279+5255”における水の発見は、JINMOに大きな衝撃を与えたそうです。
この天体は地球から120億光年の彼方(つまり観測されている姿は120億年前の姿。ちなみに宇宙が産まれたのは136億年前とされています。)にあり、通常のクエーサーの5倍、太陽の130兆倍のエネルギーを放出しているそうです。
そこに水が発見されたのですが、その量が『殆ど“無限”と言っても良いほどの膨大』なのです。
地球の総ての水の140兆倍の量、重さにして太陽10万個分の水だそうです…。
まさしく想像力の限界を超えます。

液体の水、固体の水、気体の水、そしてプラズマの水。
4つの態が混在し、猛烈な速度で変転しているカオス、時空間のあらゆる両端を無意味にする“無限のカオス”の水音。
それをJINMOは想像したそうです。
JINMOの水に対する関心は、20年前にリリースされたアルバム“ライブ・アット・ザ・ニッティング・ファクトリー”収録の楽曲“水の宴”から見られ、そこでは水の4つの態が変転する様が音で描かれていました。
本作では、猛烈なエネルギーを持って無限時空間の中、その4つの態が混在しているという、地球においては異常な状態が描かれており、“21世紀版・水の宴”と言えるかもしれません。

そして私には、このような宇宙規模的なイメージと同時に、胎内からこの世へ出る時と、死の瞬間の臨死体験の時というヒトにおける“態の変化”が混在したイメージも涌き起こるのです…。
(因みに、本作に通奏される低音での心臓の拍動のような音。これはJinmoidで演奏されたものですが、本作を制作中に計測されたJINMO自身の心拍数、1分間に74回に即した速度になっているそうです。)

たいへんデリケートで複雑なパンニングと、可聴域すべてを満たし、それ以上の超音波帯域も含んだオーケストレーションが成されていますので、良質のヘッドホンでの御鑑賞をお薦めします。

ジャケットは、NASAによる“Quasar APM 08279+5255”の姿です。
現代音楽、先端的テクノ、実験音楽をお好きな方々にはもちろん、ギター愛好家の方々にもお薦めのアルバムです。

前作”Plectics Tap”から僅かに4日。
通算第142作めのソロ・アルバム(Avant-attaqueからの第123作め)、リリースです。
もちろん、Apple ロスレス 44.1kHz 16bitの高音質です。

(Avant-attaque:HARI)