跳り起ち声振りしぼりこの儂は、
「禽よ、この言葉をこそ袂別の符ともせよ。
大雨風や夜の闇の閻羅の界の海涯にとたち還れ、
その心の譚りたる誑誕の印として、かのかぐろき羽をな賂ひそ。
儂がこの閑情をな攪乱しそ。扉口なる石像の上を郤退け。
儂が胸奥よりはその鳥喙を去り、この扉口よりはその姿相を消せ。」
大鴉いらへぬ 「 またとなけめ。」
さればこそ大鴉 いかで翔らず恬然とその座を占めつ、
儂が房室の扉の真上なる巴刺斯(パラス)神像にぞ棲りたる。
その瞳こそげにげに魔神の夢みたるにも似たるかな。
灯影の禽の姿を映し出で、床の上に黒影投げつ。
さればこそ儂が心 その床の上にただよへるかの黒影を
得免れむ便だも、あなあはれ
・・・・・・・・・・またとはなけめ。
("大鴉"から17節と18節 エドガー・アラン・ポー:著、日夏耿之介:訳)
『大鴉』(おおがらす、The Raven)は、アメリカ合衆国の作家エドガー・アラン・ポーが
1845年1月29日に発表した物語詩。その音楽性、様式化された言葉、超自然的な雰囲気で名高い。
心乱れる主人公(語り手)の元に、人間の言葉を喋る大鴉が謎めいた訪問をし、
主人公はひたひたと狂気に陥っていく、という筋である。
学生であろうと指摘されることの多い主人公は、恋人レノーアを失って嘆き悲しんでいる。
大鴉はパラス(アテーナー)の胸像の上に止まり、「Nevermore(二度とない)」という言葉を
繰り返し、主人公の悲嘆をさらに募らせる。詩の中のいたるところに、
ポーは伝承やさまざまな古典の隠喩を行っている。
(Wikipediaから)
エドガー・アラン・ポーの"The Raven (大鴉)"。
この18節からなる魔術的(magick)幻想的叙情詩を、JINMOは魔術的(magick)な18曲にした。
本作は大編成のストリングスと男性合唱からなるサイバー・ゴシックなオーケストレーションと、
デジタル・ハードコアなビートとのアマルガムである。
ヒトに非ざる非実存ナレーターは、MacOS X Leopardによる合成言語。
漆黒のサイバー・ハードコア・ゴシックが鳴る。
闇夜、一人で、蝋燭の炎を凝視しながら、研ぎすまされた霊感を以て、熟聴していただきたい作品。
付録ブックレットにはエドガー・アラン・ポーの"The Raven (大鴉)"の原語全文を収録。
現代音楽愛好家はもちろんのこと、
先端的テクノ・マニアにもお薦めのアルバム。
The magick visitor in the jet black
tells the magick words in the jet black
to me at the magick night in the jet black.
I love the words.
漆黒の魔術的訪問者は、
漆黒の魔術的夜に、
漆黒の魔術的言葉を、
私に告げる。
私はその言葉を愛する。
(JINMO)