Piano Genome (ver.5.0)

1. Piano Genome (53:24)












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俯瞰  超越者の視点  観察  ブラウン運動  群衆の中の個
ぶつかり合う  乱反射  ねじ曲がる重力  砕ける波の超スロー再生映像
深海生物の妖艶なる発光  ベネッシュの鉱物学  都市のフラクタル
ガラス破片の断面  拡散  カーボン・グラファイト組成の顕微鏡写真
意思の力  床に落ちた血液  液体窒素に曝された花弁  複雑系での窒息
水銀製の王冠現象  衛星軌道の彼方上空  空中に停止する羽毛
真空中の孤独  ブルーLEDによるイルミネーション胎児  混沌の聖性
透明な力学的実存  固まった少女  シリコンの晩餐  永遠の二重螺旋階段
復活するドリー  降り注ぐモノ  煙の微粒子  砕けた天然水晶球
溶けて流れる影  超光速の眼球運動  光の洪水を浴びる
最も遠い宇宙の撮影  時間軸の一歩外へ  美しき狂馬  数学のエロス
祈る老人  光  そして光  暗黒の中の光

私の表現したいピアノ曲を演奏するのに、私の手の本数は少なすぎる。
それは私の責任ではないが、かといってそれを理由に実現を不可能だと決め、放棄するのは、表現者としての怠慢だと思った。
(JINMO)



このピアノ曲の楽曲としての完成度の高さに、耳が素直に反応。
『なんとまぁ、美しいのだろう……。』と音楽に耽る悦び。
長い夢の後に目覚めたような、甘い気だるさと解放感に酔いしれながら、しばらく放心状態……。
初めて耳にした時に、これまでの概念に縛られることの無いピアノ曲の提示に驚きを隠せませんでしたが、
同時に新鮮でした。

このピアノ独奏曲を人間一人で演奏することは不可能だと思います。
私の推測ではありますが、演奏には人間の数が少なくとも4人以上、
ピアノは2台以上必要になるでしょう。
しかも、演奏には高度な技術が必要です。
鍵盤を打鍵する際の技術が必要なのは当たり前のことで、何より重要で難しいのは、
この曲を演奏する複数の人達が同様にこの曲を理解し、『表現する』という事です。
そんな要素を超越して自分ひとりでこれだけの大きな構成の曲を演奏できたらなら……。
今回、JINMO氏はそれを実現しちゃったんですね。
クラっときました。

ピアノを弾く方も弾かない方も、是非、聴いて共鳴して欲しい作品だと思います。
(岸本麻子嬢/ピアニスト)



 "Piano Genome"のもっともユニークな点はここにある。
たとえば必要人数2人の演奏を二人の人間が行うのは当たり前のことだ。
これが「書かれた」曲の演奏ならば綿密な打ち合わせとリハーサルで完全に思い通りのものになろう。
即興的要素が入ったものも、演奏人数分の意識が反映された演奏として成立する。
しかし即興的要素が入り、その結果にまで統一されたあるひとつの意識を反映し切るのは、
別個の人間がまったく同じ意識の元に即興できない以上、不可能なことだ。
ここでは、その不可能と思われたことが為されている。
もっと厳密に言えば、実際の指の肉体運動などではなく、
不可能と思われた演奏を可能なものにした意志とアイデアこそが"Piano Genome"の唯一無二の特徴である。
(“ I ”氏)