JINMO情報・号外(無眼球室・封印)

 先日、2001年10月6日、港区某所にて、JINMOによる革新的な演奏会“無眼球室”が実行されました。既に当方BBS“懇談の華園”や、参加者によるweb上でのレポートなどにより、この演奏会がいかに刺激的で、かつ忘れ難いほどに快感であったかを、御存知の方も多数いらっしゃる事でしょう。参加者の御一人、knd-1さんによる詳細な報告が以下のURLにあります。

http://www.na.rim.or.jp/~knd-1/edgeofchaos/

 演奏に先立ち、参加者を前にJINMOは言いました。
『交通事故などの際、無音状態になって、高速で近付く自動車がクッキリとまるでスローモションの様に見えた・・・。また、野球選手がバッティングにおいて、周囲の音が消え、ボールが止まって見えた・・・。このような例を日常的に、我々はよく知っている。これはコンピュータでいうなれば、脳内のCPUが通常とは異なる働きをおこなったためと考えられる。通常、五感に割り当てて使用しているCPUパワーを、異常事態に際して“視覚”に特化してフル稼動させたためだ。故に、聴覚のためのアプリケーションはシャット・ダウンされ、視覚の分解能が異様に高まったのだ。いうなれば“視覚特化体験”。そして、条件さえ整えられれば、“聴覚特化体験”というものも実現し得るのだ。私自身、このような体験をした事がある。十数時間、休み無く集中してレコーディング作業をしていた時の事。私はエンジニアと共に、一万分の一秒の時間単位の世界で、百分の一ヘルツ単位の音を、十分の一デシベル単位の強弱で操作し続けていた。その時、突然、目の前に食事が差し出され、スタッフから休憩を促された。私とエンジニアはこの時始めて、我々がかくも長時間、食事も休憩も取らずに没頭していた事に気付いた。作業を中断し、スープを一口含んだ時に、それは起こった。味がしないのだ。それどころか、味が音として感覚される。私とエンジニアは顔を見合わせた。彼もまったく同症状だった。
[このスープ、ミッドハイがザラついていて、ローが足りない]
我々は“味の聴こえ方”も同じだった。CPUパワーを聴覚のためだけに使用した時間が長かったため、デスクトップ上にまだ味覚アプリケーションが立ち上がっていない状態で、味覚ファイルを拡げようとし、代替アプリケーションとして無理矢理に聴覚アプリケーションが使われてしまった事によるバグなのだ。このように条件によって、感覚は特化、変容し得る。“無眼球室”はそこに鳴る音が主体ではなく、それは機能する装置であり、主体は参加者の特化、変容していく感覚なのだ。』

 参加者は全員、この演奏会のために用意された目隠しで視覚を奪われ、手足を拘束されて、床に胎児のように寝かされました。これらは専門家の手により、痛みや不快感のないように注意深く施術されました。JINMOによると、手足の自由を奪うのが目的ではなく、姿勢や身の振り方、手足の所作、無意識のボディランゲージなどから解放され、より自由に意識を振る舞わせる為との事です。終演後、ほとんど全員が、自分が寝ているのか、座っているのか、立っているのか、はたまたどちらが上で、どちらが床なのかも判らなくなった、と感想されました。五感の内の触覚において感覚している重力の支配からも、事実上解放されたという事です。JINMOは言います。
『ジョン・C・リリー博士はアイソレーション・タンクによって感覚遮断をし、それで変容意識を実現しようとした。無眼球室は一見、類似した印象を与えるが、実はまったく異なる。目隠しも拘束も、そして演奏される音も、それによって変容意識をもたらしたりはしない。これらは、参加者のCPUを聴覚アプリケーションに特化させるのが目的の装置なのだ。この聴覚特化の実現により、五感の内の残りの四つはおのずと自閉する。その結果、時間感覚、空間感覚が変容していくのだ。』

 演奏はコンピュータを主体に、ギターも併用しておこなわれました。シーケンスは一切おこなわれず、参加者の状態を確認しながら、それに応じた音を加えていくというインプロバイズ・オーケストレーションでした。演奏中は不測の事態に備え、複数名のスタッフが注意深く介護についておりました。演奏時間は3600秒間。演奏後、拘束を解かれた参加者は、全員が時間感覚を変容し、「まだ15分か20分でしょう」と驚いていました。前述のように空間感覚の変容を実感した人、幻視体験された人も半数近くいらっしゃいました。そして皆、この不思議な感覚を快感に思い、すぐその場で「次回はいつだ。また参加したい。もう一度やってくれ。」というリクエストをいただいたのです。

 人数限定の完全予約制のため、惜しくも参加できなかった人、またBBSなどで大いに興味を持たれた人、そして前回参加し、病みつきになってしまった体験者、などなど実に多くの方々から、「もう一度!」の御声をいただきました。マニアなら御存知でしょうが、JINMOは同じイベントを繰り返すのを嫌がります。しかし、皆様の熱い御要望をもって、スタッフも説得した結果・・・。
『もう一度だけやろう。ただし、恒例化などというのは、表現者にとって怠惰であるし、私はもっと、もっと、と常に違う局面に直面していきたい。故に、このイベントはもう一度だけで、封印する事にする。イベント名は【無眼球室・封印】だ。』

 さて、皆様、本当に御待たせしました。ここに“最後”の聴覚特化体験イベント【無眼球室・封印】を御案内いたします。

2001年11月24日 (土)
無眼球室・封印----------The Room Without Eyes・Sealed
演奏--------------JINMO
入室開始----------2001.11.24.19:30
発音開始----------2001.11.24.20:00
入室料------------3000円(welcome drink付 追加drinkは別になります)
完全入場者数制限---10名様限り(完全予約制)
          なお未成年者は参加できません。
会場--------------東京都港区某所(予約完了者にのみ通達)にて。
概要--------------参加者は全員、目隠しによって視覚を奪われる。さらに、その手足を完全に拘束されて、身動きができない状態で横になる。かくして、そこにJINMOの演奏が繰り広げられ、参加者はその生涯で初めての“純粋聴覚体験”に身を曝す事になる。聴覚のみが、嫌が応でも鋭敏に世界へと開いていく体験。その果てに、無眼球室に現れるのは、いかなる風景なのか。純粋なる歓喜の音世界を、奪われた視覚で目撃せよ。封印される無眼球室。この歓喜を自らの魂の奥底に封印せよ。

ワクワクですね。マニア必見。逃すと本当にもう2度と無いこの企画。わずか10人だけが体験できる“純粋聴覚体験”。

さてさて、御予約はメールのみによる受け付けです。
今回は2001年11月19日23時59分を締め切り時とし、それまでの総べての御申し込み者の中から、抽選で10名様を御案内する事になりました。抽選の結果は御申し込み者全員に、21日にメールにて御連絡いたします。リピーターの方の参加ももちろん歓迎です。なお未成年者、及び心臓疾患、閉所恐怖症等の方は御遠慮ください。目隠し、及び拘束具はこちらで御用意いたします。

私、岸本もオシャレして参ります。それでは“無眼球室・封印”で御会いしましょう。最後にひとこと。「いつまでもあると思うな、親と無眼球室。」

DNA音楽研究所:岸本はり